研究概要 |
1.S糖タンパク質,およびNS糖タンパク質の抗体の作成とその性質:Brassica campestris の柱頭より,S糖タンパク質,NS糖タンパク質を精製し、マウスを用いて抗体を作成した。ここで得られた抗体はそれぞれの糖タンパク質への特異性が高いものであった。 2.抗体によるS糖タンパク質の柱頭状の分布の解析:上記の特異性の高い抗体を用いたイムノゴ-ルド法で,柱頭の乳頭細胞を電子顕微鏡で観察したところ,S糖タンパン質は細胞壁中に多く存在することが判明した。このことはS糖タンパク質が細胞表層にあり,自己の花粉の認識に関わっているとの説を支持するものである。 3.モノクロナル抗体の作製:S8糖蛋白質,NS糖蛋白質について,モノクロナル抗体の作製を試みた。その結果,現在までに,S糖蛋白質にたいするモノクロナル抗体1種を得ることに成功した。この抗体は,S糖蛋白質に特異的で,NS糖蛋質は認識しない。これによって,従来やや曖味であった,S糖蛋白質とNS糖蛋白質を明らかに識別できることが分かった。 4.S8糖蛋白質およびNS糖蛋白質のcDNAの単離と塩基配列の決定:開花当日のS8株の柱頭より作製したcDNAライブラリ-より,合成DNAプロ-ブによってスクリ-ニングした結果,S8糖蛋白質,NS糖蛋白質をコ-ドするCDNAを得た。このうち,NS糖蛋白質については塩基配列の決定を終了し,これまで,不明であったNS糖蛋白質の全アミノ酸配列を決定することが出来た。さらに得られたcDNAを用いて,ノ-ザンハイブリダイゼ-ション,ゲノミックサザンハイブリダイゼ-ションしたところ,アブラナ科植物でのS糖タンパク質,NS糖タンパクのmRNAあるいはゲノム遺伝子の状態についての情報を得ることが出来た。
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