研究概要 |
赤血球は酸素を運搬する機能を持ち,生体全体の代謝活性に影響を及ぼしている。赤血球細胞は一定の寿命があり死滅していくので,生体はこれを補給しなくてはならぬ。この補給は未分化な前駆細胞の分化と増殖により達成される。この赤血球前駆細胞の分化増殖を促進し,赤血球形成の主要な制御因子は,エリスロポエチン(EPO)と呼ばれる腎臓で生産される糖タンパク質である。動物に無タンパク食を与えると赤血球形成が低下する。この低下はEPO生合成の停止によることを明らかにした。このEPO生合成を停止させる機構を解明することを目的として実験を行い以下のような成果を得た。 1.血清中及び腎細胞培養上清の微量のEPOを正確にしかも迅速に定量するため,EPOの異なるエピト-プを認識する2種の単クロ-ン抗体を調製し,サンドイッチ型酵素免疫法による定量法を確立した。 2.腎臓におけるEPO生産細胞については今迄に種々の説があり,どの細胞が生産しているかについては不明確であった。EPOに対する親和力の高い単クロ-ン抗体を調製し,貧血によりEPOの生産を誘導したマウスの腎臓を酵素抗体法により染色した。その結果,EPO生産する細胞は腎臓の尿細管近辺の毛細管内皮細胞であることを示す結果を得た。 3.EPO生産細胞の培養系を確立するために,貧血ラットの腎皮質細胞をコラゲナ-ゼで分散させた後に培養した。培養上清にEPOの生産を確認した。EPO生産細胞を分離濃縮するために,遠心分離法などを用いた。その結果,EPO生産細胞をかなり高濃度に濃縮することが可能となった。このようにして得られた細胞を培養し,培地へのEPO生産に対するラット血清(無タンパク食とタンパク食)の影響を観察するシステムを完成した。
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