研究概要 |
本研究では水産無脊椎動物の生理活性高分子の精製,構造解析および遺伝子クロ-ンの解析を行った。(1)活性成分の精製と構造解析:アカフジツボのガラクト-ス結合レクチンBRAー2(分子量14万)の一次構造解析を行い,本レクチンが173アミノ酸残基よりなる糖タンパク質であることがわかった。BRAー2およびBRAー3(分子量6.4万)の一次構造および分子内SーS結合の位置とこれまで報告された無脊椎動物レクチンの構造を比較すると,20%程度のホモロジ-配列が存在することが認められた。また,すべてに共通するアミノ酸残基は分子内に存在する大小2個のSーSル-プ内に認められた。また,これらのSーSル-プに糖認識結合部位が存在することを確認した。 また,軟サンゴ<Sinularia>___ー sp.からは初めてガラクト-ス結合特異性を示すレクチンを分離した。このレクチンは分子量7.8万,単鎖のポリペプチドで,マクロファ-ジと腫瘍細胞の結合を誘導する。一方,アメフラシの抗菌タンパク質の検索を行い,アマクサアメフアシの分泌物中からグラム陽性およびグラム陰性菌のいずれをも強く増殖阻害するタンパク質を分離した。本成分は分子量6.7万の単鎖のポリペプチドで,抗菌活性のほか,in vitroの強力な抗腫瘍活性を示した。(2)遺伝子クロ-ニングと解析:クロ-ニングはアカフジツボBRAー3に絞って検討を加えた。RNA画分よりcDNAライブラリ-を作成,合成DNAをプロ-ブとしてスクリ-ニングと,10万クロ-ンよりハイブリダイズするBRAー3 cDNA5個を得た。3個のクロ-ンを解析した結果,BRAー3が24アミノ酸からなるシグナルペプチドをもつ前駆体として翻訳されること,122番目のアミノ酸がArgのものとLysのものとがあること,BRAー3量の季節変化はmRNAの転写レベルで調節されている可能性が高いことなどを明らかにすることが出来た。
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