研究概要 |
1.イ-ストの酸性リボソ-ム蛋白質は4種の18kDaタイプのものと,1種の38kDaタイプのものよりなる蛋白質ファミリ-を形成している.これらの蛋白質の遺伝子については,1)一つを除いて同一クロモソ-ム上にある.2)18kDaタイプのうちP2タイプの二つは非必須遺伝子である.3)栄養のシフトアップ,熱ショックなどの変化にともなうin vivoでの発現調節機構を調べるため,合成プロ-ブを用いて各遺伝子の発現レベルの変動を調べた.その結果,全体的には塩基性リボソ-ムタンパク質のそれと似た発現をしているが,個々の遺伝子の発現は培養条件によって異なることが解った.4)ことに,A0ーmRNAレベルは熱ショックには反応せず,甲状腺由来細胞の結果と合わせて,A0が特異な機能をもち,他と異なる発現調節を受けていることが示唆された. 2.酸性リボソ-ム蛋白質の構造と機能については,1)十数アミノ酸残基からなる共通なC末端配列は,合成ペプチドを用いた結果から,この部位は従来考えられていたようなリボソ-ムの結合部位ではなく,翻訳因子などとの相互作用に関係している部位であることが解った.2)13kDaタイプのN末端側の40残基には両側性の疎水性ジッパ-構造が見られ,これがお互の結合に関係し,38kDaタイプに存在する疎水性ジッパ-とも結合してリボソ-ム上に酸性リボソ-ムタンパク質の複合体を形成しているものと考えられた. 3.リボソ-ムを不活性化する毒素であるαサルシンとリシンは,リボソ-ム大亜粒子の共通の部位に作用する.この部位の毒素に対する親和性はタンパク質を除去すると極端に低下する.そこで,裸のrRNA,あるいは合成ポリヌクレオチドを用いて毒素の親和性や基質特異性に与える効果について検討したところ,一定の長さのステムと中央にGAGA配列をもつル-プ構造が必須であることが解った.
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