研究概要 |
ディファレンシャル・ハイブリダイゼ-ションの手法を用いて,ササゲ成熟種子子葉のポリ(A)RNAから作成したcDNAライブラリ-を選別し,保存型mRNAのものとみられるcDNAクロ-ンを得た。そのうちの1種PSAS10は種子成熟のIII期(開花後13〜15日目)以後に検出されるようになり,発芽後は24時間目まで徐々に減少した。それゆえPSAS10は種子成熟の過程で合成され,休眠期から発芽期にかけて存在する保存型mRNAに相当するものと推定した。 次にPSAS10ーcDNAの塩基配列を決定した。このcDNAは459bpからなっており,これに36bpのポリ(A)鎖が付加していた。この配列から導き出されたポリペプチドは約10KDaの大きさであり,システインに富むのが特徴である。しかし,これまでに知られているシスティンに富むタンパク質,すなわちダイズのKunitzトリプシンインヒビタ-,コムギのαーアミラ-ゼインヒビタ-,イネの10ーKDaプロラミンなどとはアミノ酸配列に相同性は認められなかった。 ササゲ成熟期のI期(開花後9〜11日目)ないしII期(同13〜15日目)にはPSAS10ーmRNAは検出されない。しかし,これらの時期に未熟種子を発芽に適した条件下に置くとかなりの発芽率を示すが,このような未成熟発芽の状態の胚(子葉)ではPSAS10ーmRNAが検出できるようになった。このことからもPSAS10ーmRNAが発芽初期のタンパク質合成に不可欠な役割を果たしていることが示唆される。現在は,このタンパク質の性質を調べる目的で,cDNA塩基配列に基づく合成ペプチド(約20アミノ酸残基)を作製し,これのウサギ抗体を利用して,種子成熟・発芽期におけるこのタンパク質の検出を行っている。
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