研究概要 |
2種のヒトデ生殖巣刺激物質(GSS)の構造決定を目的としている。GSSは生殖巣の濾胞細胞を標的細胞としてそれに卵成熟誘起物質(MIS)を生産させるペプチドである。申請の時点でキヒトデGSSのアミノ酸配列分析が一部行われていたが、量不足から分析結果に不確実な点が多かった。そこで精製の全過程にわたって検討しなおし、神経採取,GSS抽出,脱脂,脱塩,分子篩クロマトグラフィ,等電点電気泳動,順相および逆相分配クロマトグラフィによる精製過程を確立した。その結果,N末より16残基のアミノ酸配列を得た(アミノ酸一文字表記にて,AEKYVGMGSYMALVGR)。これに基きあらためて合成ペプチドを作製精製し,その配列を確かめた後,マウスとウサギに免疫して抗血清を得た。この抗血清はキヒトデとイトマキヒトデの天然GSSの双方を力価は低いながら中和した。今後,アフィニティクロマトグラフィ(プロテインAおよび合成ペプチドを固定化した担体を利用)を行って、この血清からIgGを部分精製・濃縮しこのIgGを固定化して天然GSSの精製に利用する予定でいる。天然GSSはなお必要であり、構造分析にも用いるがまた力価の高い抗体を作製することにも用いる予定である(合成ペプチドはGSS作用も示さず、GSS作用の抑制もしないが、GSSと抗原抗体反応するのでキヒトデGSSペプチドの一部を反映すると考えられる)。 一方、アミノ酸配列分析に基いてキヒトデGSSのDNA塩基配列を推定し,DNAプローブを3種(センスとアンチセンス)作製した。これを用いてキヒトデ神経組織からのポリアデニルRNAに基づくcDNAもしくはキヒトデゲノムDNAをPCR法でスクリーニングしているが増巾されるDNAは得られていない。合成ペプチド抗体を利用したスクリーニングも試みる予定である。そのためのDNAバンクは準備した。
|