研究概要 |
すべての多細胞動物の個体の一生は、卵が受精することより始まる。しかし、卵が精子を受け入れるようになるには複雑な一連の変化があり、これが卵成熟の過程である。申請者の研究室ではすでにこの卵成熟は脳下垂体から分泌される生殖腺刺激ホルモン(GTH)の作用で卵濾胞細胞で生成される卵成熟誘起ホルモンの働きで起こることをみつけ、さらにサケ科の卵成熟誘起ホルモンが17α,20βージヒドロキシー4ープレグネンー3ーオン(17α,20βーDP)であることをみつけた。本研究の目的はGTHの作用により17α,20βーDPが生成される際にみられる顆粒膜細胞での20βーステロイド水酸基脱水素酵素(20βーHSD)の活性化の分子機構を解明することである。 初年度はアマゴの排卵後濾胞細胞のサイトゾ-ル分画から硫安沈澱、BlueーSepharose CLー6B,DEAEーSephacel,及びFPLCによるゲル濾過(Superose12)を経て20βーHSDを部分精製することにより比活性を約100倍高めることができた。更にこの部分精製した20βーHSD分画を抗原として、モノクロナル抗体の作製を開始した。増殖したハイブリド-マの中から上記の抗原を用いての酵素免疫定量法によりスクリ-ニングを行い現在数種の有望なクロ-ンを得ている。今後これらのクロ-ンの中から20βーHSD活性の抑制を指標として目的の20βーHSDモノクロナル抗体を得たい。さらに、これと平行して、顆粒膜細胞の20βーHSD活性をGTH処理により高め、この細胞のミクロゾ-ム分画を抗原としてモノクロナル抗体を作製したが、この中から卵成熟期の顆粒膜細胞を特異的に認識するモノクロナル抗体がいくつか得られた。 今後これらのクロ-ンの20βーHSD抑制機構についても検討する予定である。次年度はこれらの抗体を利用して20βーHSDの定量法を確立し、GTHで誘導される20βーHSDの活性化を定量化する。
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