研究概要 |
本研究は、野菜・花卉等の園芸作物の組織培養において、好適な培地組成および環境条件を栄養生理学的に検討しようとするものである。平成3年度は、実験1では寒天の無機要素組成について検討した。次いで実験2.1では、MS処方を基本として、寒天の種類、培養器内の湿度やCO_2濃度の影響について、さらに実験2.2では培地中のN,P,K濃度の影響について、ジャガイモ小植物体を用いて比較した。 和光一級寒天(和光寒天)とDifco Bacto agar(DB寒天)とを分析したところ、前者は後者のNは7倍、K,Mgは約3倍多く含まれており、寒天の種類によってはかなりの無機要素が培地中に供給される可能性が考えられた。 寒天の種類を比較すると、おおむねDB寒天のほうが良好な生育を示した。従来の培養法であるMS処方を培地とした密栓容器に比べ、通気栓をした場合にはいずれも生育が改善された。また容器が置かれる環境としては、湿度は高いほうが、CO_2濃度は低いほうが生育が良かった。さらに培地中のN濃度はMS処方(840ppm)よりかなり低い300ppMで、P濃度はMS処方(39ppm)より高い100ppmでそれぞれ生育は最大となった。K濃度は1,000ppmまで高濃度ほど生育良好となった。いずれの場合にも、外植体を置床した初期に根の生育が良いものほどその後の植物体生育も良好となることがわかった。 以上のように、ジャガイモの組織培養における初期条件としては、通気が何能な培養容器を用いて、良く精製された寒天で、ある程度高い湿度に維持するのが良いことがわかった。さらに、培地の好適無機要素組成はMS処方とは異なる可能性がうかがえた。
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