研究概要 |
本研究からカキの雌雄性分化とそれに影響を与える生理活性物質の効果について以下のことが明確となった。 1.雌花と雄花の性決定は花芽分化の初期(6月)にすでに決まっており,8月までに雌花ではがく片形成期,雄花では中心花の花弁形成期まで進行し,その状態で越冬する。 2.雌花と雄花の分化はその枝梢に着生した花性と関連しており,雌花を着生した枝は雌花,雄花を着生した枝は雄花を分化する傾向がある。また,先端の芽では雌花が,下部の芽では雄花が分化する傾向があった。 3.カキの雌雄性発現はサイトカイニン処理によって顕著に影響された。すなわち,合成サイトカイニンであるベンジルアデニンを春の萌芽直後に出現した雄花に処理すると偽雌ずいが発達し,両性花への性転換が引き起こされた。さらに,BAは雄花の分化期の処理でも効果があり,‘台湾正柿'の2番枝に着生する雄花を両性花に転換させた。これらの事実は,雌雄性発現に枝梢内の生理活性物質が重要な要因である可能性を強く示唆した。 4.雄花着生枝からは雄花が,雌花着生枝からは雌花が出現する規則性のある‘岩瀬戸'を用い,雄花着生枝と雌花着生枝について花芽分化期の枝梢内サイトカイニン様物質と抑制物質の活性を測定した。測定はメタノ-ル抽出液を精製し,高速液体クロマトグラフィ-による分画後,サイトカイニンについてはアマランサス,抑制物質についてはイネ幼苗テストの生物検定によって行った。その結果,サイトカイニンについては雄花・雌花着生枝ともにゼアチン様,2ーiP様サイトカイニンが認められたが,それらの活性は着生した花性で差異がなく,抑制物質は予想とは逆に雌花着生枝でその活性が強かった。この事実は,雌雄性発現に及ぼす生理活性物質の複雑な作用を示唆していた。
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