研究概要 |
ミトコンドリアDNAは細胞質に存在し,母性遺伝をするので,母系の系統分化を調査することになり,カンキツ類のような複雑な自然交雑をたどった種類の類縁関係の解析には有利な方法といえる.本研究においてはカンキツ類及びミカン亜科植物を材料としてミトコンドリアDNAを抽出し,その系統分類に利用することを目的とした.得られた結果と今後の問題点は次の通りである. 1.DNAの抽出に際し,材料とする葉中のフェノ-ル化合物や精油成分などの二次代謝物がDNAの抽出効率を低くしていることがあきらかになった.mtDNAの抽出材料にはカルス用いることとした. 2.ウンシュウミカンの成葉とカルスを用い,mtDNA及びcpDNAの抽出方法につきそれぞれ6種合計12種の抽出方法の検討を行った.成葉からのmtDNAの収量は生体重1g当り0.46μg,カルスからは0.34μgであった.成葉からのcpDNAの収量も低く生体1g当り最高で1.05μgであった. 3.カルスからmtDNAを抽出し,制限酵素EcoRIでdigestionし,RFLPを作成しようとしたが,鮮明な像が得られなかった.寒天やゲルライトのような培地の固化剤がdigestionを妨げていることが明らかになった. 4.ミカン亜科植物7属19種につきのアイソザイム分析を行った.Microcitrus属とEremocitrus属に共通の遺伝子座が存在すること,Citropsis属,Atalantia属及びFortunella属の種間の類縁関係を明らかにした. 5.キメラ品種といわれている,‘キンコウジウンシュウ'のそれぞれの起源層からカルスを誘導し,もとの品種とされている‘ウンシュウミカン'及び‘キンコウジ'の起源層の組織とアイソザイムを比較した.‘キンコウジウンシュウ'がキメラ品種であることを明らかにした.
|