研究概要 |
本研究は,九州,四国,本州に生育している天然生ナラ類を研究対象とするもので,実態調査によってナラ類の保有している遺伝的変異を明らかにすることを目的としている。 1、ミズナラ:大分県,熊本県,宮崎県,新潟県,鳥取県,奈良県,愛媛県,徳島県下の各集団について18形質を比較して,7形質は安定していて樹種の特性もよく示すこと,8形質は地域的変異性が顕著であり,大陸に近いほどモンゴリナラの遺伝子滲透の影響が強い傾向があることなどが明らかになった。 2、コナラ:長崎県対馬,同五島,新潟県,鳥取県,京都府,山口県,愛媛県,徳島県下の各集団について18形質を比較した。7形質は安定していてコナラの特性をよく示すが,8形質は地域的変異性が著しい。このことから,調査した各地にはそれぞれ特色のあるコナラ集団が形成されていることが明らかになった。 3、カシワ:長崎県,新潟県下のカシワ数集団を調査した。18形質を北海道のカシワ集団と比較したところ,6形質は集団間で差が認められず,カシワの識別に役立つことが明らかになった。10形質は著しい集団間差異が認められ,カシワは高い地域的変異性をもつことが示された。北海道産と九州産カシワの比較では,北海道産は葉が大きく葉柄が短いが,堅果,穀斗は小型であり,九州産カシワは葉が小さく葉柄は短いが,堅果,穀斗は大型である。これは両集団が大陸からの移動径路を異にするためではないかと考えた。 4、産地試験:ミズナラ8産地89母樹家系,コナラ8産地125母樹家系,カシワ3産地44母樹家系が九州大学早良演習林において産地試験に供された。発芽,活着状況は良好である。
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