研究概要 |
本年度においてはまずゲノム操作を安定して行なうことのできる温度処理の方法を確認し,サケ・マスでは媒精接水後15分後から15分間(水温10℃)、28℃の温水へ浸漬することが最も有効であると結論された。次いで,倍数化を簡便かつ確実に確認する方法を検討し,フロ-サイトメトリ-によるDNA量測定基準を明らかにした。また,抗小体数を計測する具体的方法を編み出し,ル-チン作業化するマニュアルを作成した。これらの方法を用い,すでに作出しておいた同質・異質培数体を現認しながらそれらの特性を解析した。すなわち,ニジマス,ブラウントラウト,ヤマメ,カワマス,イワナ,アメマスの卵を同種もしくは他種の精子で媒精し,かつ2倍体と3倍体とを作成,それぞれの発生率,ふ化率、仔稚生存性,成長率を比較した。その結果,発生率はほとんどの3倍体と異質2倍体で同質2倍体より低かった。特に,ニジマスを父親とした異質2・3倍体,およびヤマメ×グラウントラウト2倍体はほとんどふ化しなかった。一方,ニジマス×ブラウントラウトとヤマメ×カワマスの3倍体は2倍体に比較して高い生存性を示した。成長については,同質・異質の2・3倍体はいずれもほゞ同様であった。また,体形を測ったところ,ニジマス×グラウントラウト(ニジブラ)、ヤマメ×ブラウントラウト(ヤマブラ)など,父親にブラウントラウトを用いたものでは体高や体幅の対体長比が高く,肥満しのように,サケ・マスでは3倍体化によって交雑種が得られ,それらには雑種強勢現象が認められた。さらに,3倍体化によって妊性が低下し,経情品種としては一層優れたものとなることが判明した。この場合,雄には妊性を残すものがあらわれるため、全雌化処理を施すことを前提にする必要があるものの、放流対象としても有望である。
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