研究課題/領域番号 |
01480106
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用獣医学
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森 純一 大阪府立大学, 農学部, 教授 (90167685)
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研究分担者 |
玉田 尋通 大阪府立大学, 農学部, 助手 (10155252)
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 農学部, 助手 (00137241)
森岡 宏至 大阪府立大学, 農学部, 講師 (20081599)
沢田 勉 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (60081600)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1990年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 牛 / 卵巣嚢腫 / ホルモン・レセプタ- / 視床下部 / 下垂体前葉 / 卵胞上皮細胞 / 性ホルモン / コルチゾ-ル / 視床下部正中隆起 / 性腺刺激ホルモン放出ホルモン / 性腺刺激ホルモン / 性ステロイドホルモン / 卵胞中ホルモン |
研究概要 |
牛卵巣嚢腫の発生機構を内分泌学的に検討し、さらにその治療についても検討を行った。得られた結果は以下の通りである。 1.嚢腫牛の下垂体葉の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)レセプタ-の量および結合定数は正常牛に比べて著しい異常が認められなかった。 2.嚢腫卵胞の性腺刺激ホルモンレセプタ-量および卵胞液中エストラジオ-ル‐17β濃度は大型発育卵胞のそれらと比較して有意な低値を示した。さらに、非黄体化嚢腫(血漿中プロジェステロン濃度1ng/ml未満)の黄体形成ホルモン(LH)レセプタ-量は、黄体化嚢腫(同ホルモン濃度1ng/ml以上)のそれに比べて有意な低値を示した。一方、非黄体化嚢腫においてはLHレセプタ-量が多いと卵胞液中エストラジオ-ル‐17β濃度は高くなることが分かった。 3.In vitro実験で、卵胞の顆粒層細胞にコルチゾ-ルを添加すると、LHセプタ-量およびエストラジオ-ル‐17β分泌は有意に減少した。 4.In vitroの表面潅流実験で、視床下部正中隆起にプロジェステロンを作用させると、GnRHの放出は有意に減少した。 5.副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を牛に投与することにより、実験的に卵巣嚢腫を誘起することができた。誘起した嚢腫の発生過程において、排卵前に通常認められる下垂体からのLHおよび卵胞刺激ホルモン(FSH)サ-ジが消失した。さらにACTH投与後、血漿中プロジェステロンおよびコルチゾ-ルの増加、ならびにエストラジオ-ル‐17βの減少が観察されたことから、これらのことがLHおよびFSHサ-ジ消失の原因となっているものと考えられた。 6.人絨毛性腺刺激ホルモン(hCG)による嚢腫牛の治療試験から、末梢血中プロジェステロンと嚢腫卵胞液中エストラジオ-ル‐17β濃度を測定することにより、治療効果の予測がある程度可能であることが判明した。 以上、本研究の結果から、嚢腫の発生機構の一つとして、次のような一連の可能性が示唆された。すなわち、持続的なストレス状態下でのACTHの増加が起こり、これによって副腎からのコルチゾ-ルおよびプロジェステロンの分泌が亢進する。増加したコルチゾ-ルは顆粒層細胞のLHレセプタ-を減少させ、さらにエストラジオ-ル‐17β分泌を抑制して卵胞の成熟を阻害する。一方、プロジェステロンの増加は正中隆起に直接働いてGnRHの放出を抑制する。これらの結果、性腺刺激ホルモンのサ-ジが消失して排卵障害が生じるというものである。また、卵巣嚢腫牛の治療効果と発症牛の内分泌状態との間にも一定の関係のあることが示唆された。
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