研究概要 |
ある種のホルモン、神経伝達物質、増殖因子などの細胞刺激因子は、細胞内にcAMP、cGMPの上昇、細胞膜のイノシト-ル燐脂質代謝回転の促進、細胞内へのCa^<2+>動員の増加を惹起することにより、種々の細胞機能発現に関与している。これらの細胞内調節因子は、その作用を発揮するに際しては、すべてではないが、それぞれに固有のプロテインキナ-ゼを活性化し、蛋白質燐酸化反応を介して、その効果を発揮している。私達はCa^<2+>に焦点をしぼり、その作用と作用機構を検索している。カルモデュリンは細胞内Ca^<2+>作用を伝達する重要因子である。カルモデュリンの脳内における作用のいくつかは、新しく見出された高分子量を示すCa^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナ-ゼII(CaMキナ-ゼII)によって伝達されている。私達は本酵素の性質について数年来研究を続けてきた。本研究では、CaMキナ-ゼIIの機能的意義を調べる目的で、基質蛋白質を調べた。1.小脳プルキンエ細胞に局在するP_<400>蛋白質は、イノシト-ル1,4,5トリス燐酸(IP_3)の受容蛋白質であることがわかった。IP_3が細胞貯蔵部位からのCa^<2+>放出をおこすことから、P_<400>蛋白質は小胞体のCa^<2+>放出チャネルである可能性が示唆されている。私達は本蛋白質がCaMキナ-ゼIIの基質として役立つことを明らかにした。(1)精製したP_<400>蛋白質は脳CaMキナ-ゼIIによって燐酸化された。(2)脳膜標本を調製し、脳CaMキナ-ゼIIと反応させると、P_<400>蛋白質の燐酸化を認めた。(3)小脳培養細胞を放射性正燐酸とインキュベイトすると、本蛋白質の燐酸化を認めた。2.in vitroの実験で、調べた範囲の酵素の中で、CaMキナ-ゼIIのみによって燐酸化されるコフィリンは、熱ショックを与えると、細胞核内に移行する。この反応には、本蛋白質の脱燐酸化反応の伴っていることがわかった。上記のいずれの研究もさらに検索を続けている。
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