研究概要 |
本研究の目的は、アミノ酸の中間代謝に働く酵素の中で、先天代謝異常症の発症原因と考えられているものについて、その遺伝子の構造を決定し、異常症の本態を遺伝子のレベルで明らかにするとともに、酵素タンパク質の機能部位を理解することにある。2年間に得られた結果は次のごとくである。1.ヒスチジン血症の原因であるヒスチダ-ゼをラット肝からはじめて再現性をもって精製することに成功し、それを用いて本酵素のcDNAを分離、塩基配列を決定したが、それはC末端側の約50%を含む断片であった。さらにこのcDNAをプロ-プとして、ヒトの本酵素のcDNAの一部を得た。2.アルカプトン尿症の原因酸素ホモゲンチジカ-ゼをラット肝から精製して、本酵素のcDNAを取り出し塩基配列を決定したが、C末端の約50%であった。3.オロット酸尿症では、オロット酸ホスホリボ-ス転移酵素およびオロチジル酸脱炭酸酵素の両方または後者を欠くとされている。そこでヒトの血液から後者の酵素をはじめて精製した。次にマウス脾から本酵素のcDNAを分離し、さらにこれをプロ-プとして、ヒト胎盤よりこの酵素のcDNAを得て全塩基配列を決定したところ、2つの酵素のcDNAが融合しており、したがってタンパク質のレベルでも融合酵素として産生されていることを認めた。また患者から取り出したcDNAには特異な変異が見られなかった。しかも患者でつくられているmRNAおよび酵素タンパク質は、いずれも大きさ,量とも健常者のそれとほとんど変わらず、疾患の原因を確認するには至らなかった。4.動植物界に広く分布するが、ヒト,霊長類,鳥類および一部の爬虫類では欠損しているウリカ-ゼについて、その不活性化の原因を知るため、活性をもったラット肝から本酵素を精製し、cDNAついでゲノムDNAを分離して、塩基配列を決めた。そして種々の生物間で本酵素の配列を比較し、相同性の高い領域で基質プリンと結合する活性中心を決めた。
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