研究概要 |
胸腺中におけるT細胞の生成の機構とは,単純化して言えば胸腺ストロ-マ細胞がT系列細胞にどのような作用を及ぼすかということである. 本研究で明らかになったことは下記のごとくである. 1.胸腺中における最も未成熟なpreT細胞. デオキシグアノシン(dGuo)処理胎児胸腺培養(FTOC)へmicro i.t.法(microinjectorを用いて移入する方法)を用いて胸腺中のいろいろの細胞分画について,そのprecursor活性をしらべた,胸腺中のThyー1AAーDD群は骨髓中のstem cellに近く,これまでに発見された胸腺中のpreTとDては最も未成熟なものであり,骨髓から胸腺へ移した直後のものと考えられた. 2.T細胞分化増殖におけるマクロファ-ジ(Mφ)の重要性. dGuoーFTOCでのT細胞分化成熟はin vivoにおけるよりかなり遅れる. そこへMφを加えると分化成熟が促進された. 樹状細胞(DC)にはその作用がなかった. 3.ストロ-マ細胞とT系列細胞の接着. fibroblast様胸腺ストロ-マ細胞が発現し,T系列細胞との接着に関与する分子(107KDaの糖蛋白)を分離することに成功した. この分子に対するモノクロ-ナル抗体を用いて,接着とT細胞分化の関係について解析を進めている. 4.ストロ-マ細胞とそれが産生するサイトカイン. 胎児胸腺由来のfibroblast様ストロ-マ細胞株TStー4は,CD4AAーBBBAAーBB未成熟胸腺T細胞をヘルパ-系T細胞へのと成熟させる機能を持つ. TStー4はMーCSFとILー7を少量産生している. しかし,ヘルパ-T細胞方向への分化支持ち細胞間接着または未知の因子を会して行われるものと考えられた. 5.胸腺内トレランスとDC. Mlsー1AAaBBに対するクロ-ン死滅型のトレランスに関与する細胞をmicro i.t.法を利用して解析した. その結果,DCとB細胞が必要であることが示された. その場合B細胞は単にMls抗原を提供するだけで,機能細胞はDCであることが明かとなった.
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