研究概要 |
抗原受容体刺激によるT細胞の増殖誘導には,マクロファ-ジ(Mφ)等のアクセサリ-細胞(AC)による抗原提示と共に,ACの磁性因子およびACーT細胞間の相互作用が必要であることわれわれは明らかにしたので,本研究では,その可溶性因子と相互作用に関わる表面分子の実体を調べ,以下のように増殖誘導に至る過程のモデルを提唱した。 1) 抗受容体抗体(抗T3ーラテックス)によるヒトT細胞の増殖には,Mφの培養上清が必要である。その上清中の因子はILー1とILー6であり両者の協調作用が必要である。又,同時にMoーT細胞間の表面相互作用が必須である。 2) 表面相互作用に必要な因子の少なくとも一つは,T細胞から遊離するリンホカインの作用でMφ上に誘導される。このリンホカインはIFNーαで代用できる。 3) MφーT相互作用には接着因子ICAMー1をLFAー1が関与する。これを強力に阻止する抗LFAー1単クロ-ン抗体が得られた。さらに,未同定の汎白血球抗原と推測される200Kdの分子に対する単クロ-ン抗体KW23が得られ,この抗体もT細胞の増殖を阻止した。したがってこの分子はLFAー1/ICAMー1以外にTーMo間相互作用に関わる重要な分子と考えられる。 4) この系におけるT細胞の増殖因子は主にILー2である。 5) 以上より,生理的には(1)MφがT細胞に接触して抗原提示が行われる間にT細胞からIFNーαが放出され,(2)その作用によりMφに新たな表面分子が誘導される,(3)この表面分子やICAMー1,クラスIIとT細胞上の対応する分子(KW23?,LFAー1,CD4等)の間の相互作用とMφからのILー1およびILー6の作用によりILー2の産生が始まりT細胞の増殖が誘導される,というモデルを提唱する。
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