研究概要 |
重金属の内で,特に鉛によるポルフィリン代謝異常発現の程度を特異的に検出するためには,尿中に排泄されるαーアミノレブリン酸(ALA)の増加量を把握することが有効とされている。私共はマウスの尿中ALAを定量している過程で興味ある事実を見出した。即ち,マウスの尿中ALA排泄量を2系統(ddyとC57BL16)のマウス間で比較したところ,ddYよりもC57BL16の方が平均値で約3倍高いと言う,著明な系統差を認めた。そこで,この様な系統差がいかなる生体側要因によりもたらされたかを解析するために,ALAの体内代謝に直接関与している酵素であるALA合成酵素(ALAS)とALA脱水酵素(ALAD)の活性レベルを臓器において比較した。ALASはミトコンドリア酵素であるため,その測定には肝臓を用いた。2系統のマウスにおける肝ALAS活性を,新たに考案した蛍光HPLC法を用いて測定し,その活性値を比較したところ,両マウス間に有意差は認められなかった。一方,肝ALAD活性は有意差が認められ,ddYよりもC57BL16マウスの方がかなり低い活性を示した。この結果を踏まえながら,西酵素の活性比が骨髄においても肝と同様の傾向を示すと仮定すれば,本研究の中で明らかとなった2系統のマウス間における尿中ALA排泄量の著明な系統差の出現は,主にALAD酵素の関与による可能性が示唆された。この様なマウスに鉛を投与しポルフィリン代謝異常を発現させ比較したところ,尿中ALA排泄を,コントロ-ル群との増加割合で比較する限りにおいては,西系統のマウスとも同様の傾向を示した。
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