研究概要 |
健康診断が成人病予防に果たす役割を評価するため,地域と職域において観察対象集団を設定して,定期健康診断実施後プロスペクティブに観察をおこなった。地域集団としては,隣接する2町で,老健法による健康診査を平成元年,2年度に受診した者のうち,アンケ-トにより調査協力の意志表示をした2927名を対象とした。職域としては,某県の自治体職員22,478名で,全員が統一の方法による健康診断を受診している集団であった。研究目的としては,1)健康診断で用いられている各検査項目毎の,早期診断の能力と発見後の早期治療による治療効果の評価,2)一次健診と二次健診の関係,健康教育とその結果としての態度変容に及ぼす影響,の健康診断そのものの技術的評価と実施方法もしくは附随的な副次効果の評価の両面においた。最初の目的に関して,地域の集団で,健診後平均171日後に,その間の罹病調査をおこなった。その結果,47%の対象者が医療機関を受診し,その内健診で発見された疾病は15%であった。この成績を用いて,健診間隔と全有病数の内健診で発見可能な割合を、疾病の前臨床期の長さ,検査の感度と特異度を用いて表現するモデルを作成した。職域においては,検査項目毎の陽性的中率を推定するために,一次検査で異常を指摘された群の追跡調査をおこなった。二次健査の未受診者がいるため,区間推定しかできなかったが,陽性的中率は20%〜96%と違いが大きく,今後さらに詳細な検討が必要であった。さらに,代表的成人病として糖尿病をとり上げ,過去に糖尿病罹病歴のない6920人から,健診によって379人の血糖値異常者が診断され,その後1年間にこのうち126人が糖尿病で治療を受けたことを観察した。後者の目的に関しては,健診時の指導の指導によるライフスタイルの変化を調べるためアンケ-ト調査をしたところ,93%の回収率で,健診がこの面で一定の効果を上げていることが確認された。
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