研究概要 |
分泌性下痢および出血性下痢発症における細胞内mediatorsに関する実験的検討を行ない以下の成績をえた。(1)ラット空腸ループにコレラトキシン(CT),E.coliのLT toxin,clostridium difficile toxinを投与した。CT及びLTはA-Kinaseを活性化するがclostridium toxinはCa^<++>を介したメカニズムで分泌を惹起する。しかしCTもA-Kinase活性化のあとにCa^<++>を介したメカニズムが作動する可能が考えられた。(2)分泌性下痢時に刷子縁酵素のアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性上昇がみられる。今回CTにて特異的にリン酸化される膜成分との異同を抗ALP抗体にて検討したが,前者は105kDa蛋白であり,刷子縁酵素のALPとは相違していることを明らかにした。(3)小腸上皮細胞,血管内皮細胞および白血球内のCa^<++>濃度変化を螢光顕微鏡下に観察した。clostridium toxinや出血性腸尖の原因菌として注目されるE.coli由来のverotoxin(VT)は白血球細胞内のfree Ca^<++>を上昇させることが明らかになった。CTには白血球細胞内のfree Ca^<++>を上昇させる作用はみられなかった。(4)ラット回腸部の微小循環を生体顕微鏡下に観察し,各種toxin投与後の細動静脈血管径,血流速度および血管透過性亢進につき検討した。CT投与により細静脈血管径の拡張と血流速度の増加がみられFITC-BSAの血管透過性亢進がみられた。clostridium toxin,VTおいては細動静脈での血流低下,細静脈を中心とする白血球膠着現象および出血所見がみられた。後者はPAFやCa^<++>の拮抗剤により抑制され,出血性下痢の発展過程においては,上皮細胞の変化に先んじて白血球などにおいてCa^<++>の上昇が生じ,微小循環レベルでの脈管作動物質の変動が生ずることが重要であると示唆された。
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