研究概要 |
昨年度までの研究において,ヒト剖検脳から死後12時間以内であれば分解を受けていないメッセンジャ-RNAを抽出できることを明らかにした。剖検脳および脊髄からのメッセンジャ-RNAの抽出法を確立した上で,次にcDNAライブラリ-の作製方法について検討を加え,subtraction cloningに便利なように,一本鎖DNA,あるいはsenseおよびanti senseのRNAプロ-プが合成できるベクタ-を用いるcDNAライブラリ-の作製方法を確立した。この方法で作製されたcDNAライブラリ-はcomplexityが十分高く,全長のcDNAを多数含む良質のcDNAライブラリ-であることが判明した。次に,脊髄に特異的な遺伝子を同定することを目的としてヒト脊髄のcDNAライブラリ-とヒト大脳のcDNAライブラリ-の間でphenolーemulsion reassociation techniqueを用いてsrbtractionを行い,脊髄のcDNAライブラリ-の存在して大脳のcDNAライブラリ-で発現量の少ない遺伝子の同定を試み,4種類のcDNAクロ-ンを単離することが出来た。このうち2つのクロ-ンがノ-ザン解析においてもメッセンジャ-RNAの発現が脊髄で増加していることが確認され,subtrraction cloningの目的が達成されたことが分かった。ここで得られたクロ-ンは比較的発現量の多い遺伝子であり,発現量の少ない遺伝子群を効率よく単離するためにはsubtraction cloningの効率をさらに改良する必要があると考えられた。 また,遺伝性変性性神経疾患の病因の解明のために有力な手段の一つとして連鎖解析により疾患遺伝子の存在する染色体座が決定できるが,常染色体性劣性遺伝形式をとる若年性パ-キンソニズムについてのチロシン水酸化酵素遺伝子座の存在する第11染色体短腕についての連鎖解析を行い若年性パ-キンソニズムの遺伝子座がこの領域に存在せず,チロシン水酸化酵素遺伝子の異常が存在しないことを証明した。
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