研究分担者 |
秩父 志行 近畿大学, 医学部, 教授 (40088539)
石原 準一郎 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (20024250)
岩波 保則 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (40144191)
石井 直宏 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (50004619)
早原 悦朗 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (80024214)
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研究概要 |
癌細胞の治療には,外科療法および化学療法が主として用いられるが,近年注目を集めている治療法に温熱療法がある.これは,癌細胞を42°〜43°C以上の温度に一定時間以上さらすと,癌細胞だけが死滅するという現象を利用したもので,ハイパ-サ-ミアと総称される.ハイパ-サ-ミア治療はその無侵襲性に特徴があるが,癌局部の同定と温度計測の問題は十分に解決されていない.癌組織は電気的にみると誘電率が異なると考えられ,これを測定することによって癌局部の位置同定ができるものと考えられる.また,温度によっても誘電率及び導電率が異なっており,これを利用すれば加熱局部の温度計測ができる.本研究の目的はこれらにあり,癌組織局部の誘電率及び導電率の変化を極めて正確に測定することによって,癌局部の同定と同時に温度計測を行うことにある. 平成元年度(初年度)は試作した特性インピ-ダンス50Ωの同軸形アプリケ-タにより試料の反射係数Γ(散乱行列におけるS_<11>)を測定し,生体組織の誘電率および導電率の基本測定を行い問題点を明らかにした.平成2年度は,新たに同軸形アプリケ-タ3種類を製作し,同様の実験を元年度に比べ一層正確に行った.また新たにパ-ソナルコンピュ-タを用いた自動インピ-ダンス測定システムを構築した.平成3年度も同様な実験を行ったが,新たに試料の抵抗値及び容量値の温度依存性を周波数範囲50〜550(MHz)に渡って調べた.試料としては生理的食塩水,ロ-スハム及び人体などを用いた.次に従来の反射法ではなく,インピ-ダンスCTなどへの適用性が期待される透過法による透過係数S_<21>の測定を行った.この測定結果から試料の抵抗値及び容量値を算出しそれらの温度依存性を調べた.この場合も反射法同様やはり大きな温度依存性が見いだされ,これらの知見はCTにおけるスキャニングの手法と併用することで,将来人体内部部位の無侵襲温度計測の可能性を示唆するものと考えられる.平成元年度〜平成3年度に渡る研究の結果,生体試料の導電率,誘電率及びそれらの温度依存性の測定が行われ,インピ-ダンスCTによる生体内部部位の同定および温度計測へ向けての基礎デ-タを得た.
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