研究概要 |
1990年9月8日ー11日,静岡県御殿場において,精神科領域の画像解析国際会議(The International Meeting of Neuro maging in Psychatry)を主催した.この国際会議が持てたのは文部省科学研究費補助による援助があって可能となったもので,画像解析による精神疾患の原因の解明に国際的に大きく貢献する事ができた. 最近の私共の研究の成果はThe new biological tool for diagnosis and treatment in mental illness:PET(Psychiatry)やAmino acid pools,CBF and CMRO2 in affective disorders(Biological Psychiatry)等に要約されている. ボジトロンCTで見ると,慢性期精神分裂病者では,下等な猿までには存在せず人類でその体積が飛躍的に増加する脳の特定の連合野が充分に機能していない事が分った.一方幻覚妄想状態を呈する急性期精神分裂病者では視床,線条体,帯状回,側頭葉上部等の脳血流量,脳酸素消費量が正常者の2倍以上に異常に上昇しているのが見られた.また,うつ病者では脳血流量,脳酸素消費量は正常対照者と変わらないが,グルタミン酸等のアミノ酸プ-ルはうつ病者では減少していた. これらの事実は精神分裂病,そううつ病の病因を生物学的に解析する上で重要な意味を持っている.精神分裂病者では急性期には皮質下等の神経核で脳の代謝が過剰となっているし,慢性期には人である事にとって重要な皮質連合野の機能低下が起こっている.この事は精神分裂病は人類に特異的な疾病である事を意味し,脳に障害があり,その結果として精神分裂病の病態を呈する事を示していた.一方うつ病者では大脳皮質の働きに重要なグルタミン酸プ-ルが広範に低下していた. 精神疾患患者の脳受容体については膜の性質の研究を含めて引続き研究が進行中である.
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