研究概要 |
出生前後から思春期に渡る身体発育 成長に過程における視床下部および下垂体の役割を調べた。まず視床下部ホルモンの個体発生をラットで調べたところニュ-ロペプチドY(NPY)が最も早期に出現、ついでソマトスタチン(SRIF)とPOMCが検出され、後期に成長ホルモン放出因子(GRF),LHRH,ドパミンが現れた。NPY ニュ-ロンはSRIFニュ-ロンやLHRHニュ-ロンとシナプスを形成し、さらに個体発生の初期に多量に発現したのち漸次減少することなどからNPY は視床下部の発育に基本的な役割を果たす可能性が高い。また塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)のmRNAは脳幹や海馬のほかに視床下部に存在することを明らかにした。NPY ニュ-ロンとbFGFの関連について検討中である。bFGFおよび酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)は下垂体腫瘍細胞GH_3株においてプロラクチン(PRL)mRNA,合成量を特異的に増加させること、またラット下垂体前葉細胞の初代培養系でインスリン様成長因子(IGF)ーIおよびIIがTSH,LH およびFSH の基礎分泌量を有意に増加させることを明らかにし、下垂体における細胞成長因子の役割が多彩であることを示した。一方、生後の身体発育,成長には成長ホルモン(GH)が一義的であるが、GH遺伝子の下垂体における発現には視床下部から放出されるGRF およびSRIFの存在が必須である。 GRFが不可欠であることにはさほどの意外性はなかったが、SRIFの存在がGH遺伝子の発現に促進性に働くという成績は予想に反するものであり生体の調節機構の不思議さと巧妙さを示す例となろう。外界から加わる各種刺激によって個体の発育は影響を受け、たとえば、慢性的な拘束ストレスはラットの成長を著明に遅延させる。拘束ストレス下では血中 IGFーI 値は著明に低下し、また下垂体GHmRNAも明らかに低値を示した。 視床下部におけるGRF,SRIF の変化や FGH を含む細胞成長因子の動態や意義について現在研究を続けている。
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