研究概要 |
1.完全静脈栄養法(以上TPN)により投与されたブドウ糖の代謝動態:ビ-グル犬を対象として〔6ー ^3H〕ーブドウ糖と〔Uー ^<14>C〕ーブドウ糖を同時持続投与によるprimedーconstant infusion法を施行した。TPNの形で約10mg/kg・min.のブドウ糖を投与した。絶食対照群と比較して血糖値に差はみられないものの,著しい糖代謝回転速度(Ra)の増大が認められた。この場合,内国性糖産生速度は有意に低下していた。一方,外因性のブドウ糖投与に伴いブドウ糖酸化速度(Rox)は増大し,全CO_2排泄量のうちブドウ糖酸化に由来するCO_2の割合を示す%Vco_2 from glucose値も高値となった。また大量のブドウ糖を投与してもその酸化能には上限がある事が示された。ブドウ糖ーTPN下の重症感染症犬ではブドウ糖代謝転速度,酸化速度が更に増大傾向を示した。 2.肥肪乳剤がブドウ糖の代謝動態に与える影響ーとくに長鎖脂肪酸乳剤(LCT)と中鎖肥肪乳剤(MCT)の比較ー:上記1.と同様の方法で非蛋白エネルギ-量の40%をLCTまたはMCTで置き換えたTPN犬におけるブドウ糖代謝動態を解析した。LCT,MCT群間で代謝回転速度(Ra)には差を認めなかったが,MCT群で酸化速度(Rox),%Vco_2 from glucoseが高いという結果が得られた。両群の血漿インスリン値には差は無かった。MCTはとくに代謝亢進状態での有効性が期待されており,本実験の成績は今後の重症感染症モデル犬でのそれの対照として病態解明上大きな意義を有する。 3.〔1ー ^<14>C〕ーロイシンのconstant infusion法による蛋白合成率,蛋白分解率およびロイシン酸化率の測定:代謝亢進状態下の蛋白代謝動態の解析法として本法は理論的に最も優れた方法といわれているが,この大きな欠点は ^<14>Cーロイシンの血中比活性測定の技術的困難性である。今回の一連の予備実験によりこの課題を克服することが出来た。今後,重症感染症下の種々のエネルギ-基質の効果について蛋白代謝動態の面から明らかにしていく所存である。
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