研究概要 |
肝保存の研究としては免疫抑制剤であるFK506を用いて,阻血肝に対する保護効果があるかどうかを検討した。肝移植実験としては仔豚を用いて行っているが仔豚では高率に肝移植後胃潰瘍が発生する。そこで迷走神経切離術十幽門形成術を付加し,潰瘍予防効果について検討した。また肝移植後の免疫寛容をめざし,ドナ-の脾細胞を移植当日にレシピエントの脾動脈内に1回だけの注入とcyclosporinの7日間投与での生着延長を検討した。(方法)体重20kg前後の豚22頭を使用し,あらかじめEck瘻を作成したのち総胆管にカニュレ-ション後肝門部で肝動脈,門脈を遮断し温阻血肝障害モデルとした。実験群はI群を対照群,II群をFK投与群とし,FK投与では術前3日前より術当日までの4日にわたりFK506を1mg/kg筋注した。阻血時間は3時間とし,生存率,血中GOT,LDH,BSPの経肝細胞輸送能,胆汁流量,好中球化学発光,組織学的検討を行った。22回の豚の同所性肝移植を著者らが考案した方法で行い3日以上生存した11頭を対照にI群迷走神経切離術十幽門形成術付加7頭,II群付加なし4頭について胃潰瘍の発生頻度を検討した。免疫寛容の実験としてはドナ-脾細胞2×10^4個を移植当日にレシピエンドの脾動脈内に1回だけ注入し,cyclosporin10mg/kgを7日間投与し以後投与を中止した。(結果)阻血実験では1週間生存率は3時間阻血でI群1/7(14.3%),II群5/5(100%)であった。BSPの胆汁中分泌動態および胆汁流量はII群において改善され,好中球化学発光はII群で再潅流後の上昇が抑制された。再潅流1時間の組織像ではI群では空胞変生,シヌソイドの拡張など認めたがII群ではこれらの変化は軽微であった。肝移植後の胃潰瘍発生率はI群0.17(0%),II群4/4(100%)で,迷走神経切離群で潰瘍が防止できた。免疫寛容の実験はまだPreliminaryなものであるが脾細胞投与群では28,84日生存した。これに対し非投与群のそれは3,5,34日であった。
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