研究概要 |
70歳未満で術中Stage 4を除く胃癌胃全摘症例(治癒切除例)に対し、術後のquality of life(QOL)さらには遠隔成績の向上を目指して空腸pouchを作製し、従来のRoux-Y法(RY)、pouch・R-Y法(PR)、pouch・interposition法(PI)の3群間でrandomizedcontrolled studyにてその有用性について比較検討した。空腸pouchは自動吻合器(GIA)を用いて行い、約20cmのものを作製した。 1988.11-1993.3までの症例はRY10例、PR10例、PI10例で、このうち再発、死亡例を除く術後6カ月以上経過例(RY8例、PR8例、PI5例)を対象とした。 検討項目として術後3,6,12,24カ月目に術後愁訴、1回食事摂取量、食事回数、術後体重、就業状況につき問診し、栄養指標としてTP,Alb,T.Chol,TG,PLおよび末梢血リンパ球数とAlb値から小野寺らのprognostic nutritional index(PNI)を算出した。さらにpouchが代用胃としての貯留能があるかどうかについてRI添加粥食(200g)を用いて検討した。逆流性食道炎の検索は問診とともに内視鏡検査を適時用いて行った。 以上の検討結果より、PR法は従来のRY法に比べて1回食事摂取量は極めて良好で、術後愁訴も少なく、術後体重、各種栄養指標をみても3者間では最も良好であった。またRI貯留能に関してもほぼ満足できる結果であり、空腸pouch造設による有用性が確認された。しかしPI法は生理的ルートであるにもかかわらずQOL不良であり、さらに動物実験も含め術後消化管の運動生理学的な検討を要する。
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