研究概要 |
胃癌・大腸癌におけるラミニン(LN)の免疫組織学的検討から,肝転移と癌腺管基底膜LN活性の間に相関があり,肝転移例では深層や癌最深部で特にLN陽性率が高率であることを報告した.さらに,壁深達度が固有筋層以上の大腸癌で,手術後2年以上経過した83例を対象とし,LNの肝転移予知能をprospectiveに検討した.その結果,大腸癌原発巣83例のうちLN陽性は29例で,このうち術後肝転移は15例にみられた.LN染色性によりスクリ-ニングした術後肝転移のsensitivityは88.2%,specificityは78.8%で,良好な予知能を示した.さらに静脈浸襲とLN染色性の関係を検討した結果,静脈浸襲陰性かつLN陰性は肝転移率0%に対し,静脈浸襲陽性かつLN陽性例は57.1%と高率に認められた.静脈浸襲とLN活性を組み合わせると,specificityが高く肝転移の発生率は極めて高かった. 次にLNの起源と機構を明らかにするために,13種類のヒト腫瘍細胞をコラ-ゲン・ゲル培養法により三次元的に培養し,その基底膜様構造とLNと肝転移能の関係について明らかにした.ヒト腫瘍細胞の検討では,13種のうちCOLO201,WiDr,MKNー28,Cー1の4株は腺管構造と基底膜様構造を形成し,基底膜様部位にLN陽性層を認め,この4株は全て高分化腺癌で,うち2株は血行性転移を有する大腸癌由来であった.これに対して,基底膜様構造を形成しない9株は細胞塊周囲に顆粒状貯留物を認め,ここにLN陽性を認めた.以上より癌細胞周囲の基底膜のLNは癌細胞由来であることが証明された. 現在基底膜形成能と転移の関係について,LN,タイプIVコラ-ゲン,フィブロネクチン,ヴィトロネクチン,エンタクチン等を用い検討中である.
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