| 研究概要 |
1.全身麻酔・調節呼吸(F_IO_2は0.25)下の肥満患者11人を対象にPaCO_2のN(normocapnia)からH(hypocapnia)への変動の際の心拍出量(Q^^′t),肺シャント率(Q^^′s/Q^^′t)および酸素消費量(V^^′O_2)に及ぼす影響を観察した。NからHへの変動により、PaO_2の低下,Q^^′s/Q^^′tの増加,Q^^′t減少が、それぞれ、有意に起った。しかし、V^^′O_2は有意に変動しなかった。尚,ΔPaO_2とΔQ^^′s/Q^^′tとの間には有意な負の相関が認められたが、ΔPaO_2とΔQ^^′tとの間には何の相関もみられなかった。
以上から、F_IO_2がありり大きくない場合,HによるPaO_2の低下には,Q^^′s/Q^^′tの増加が関与する事が判明した。そして、この場合のQ^^′s/Q^^′tの増加はHypoxic Pulmonary Vasoconstriction(HPV)がHにより抑制されることから、V^^′A/Q^^′mismatchingの増強によると推定される。しかし、HによるPaO_2の低下にはQtの減少やVO_2の増加が関与されるとの従来の説を支持する所見は得られなかった。
2、全身麻酔・調節呼吸(F_IO_2は0.33)下の肥満患者15人を対象にアスピリン(ASA)のPaO_2に及ぼす影響を観察した。PaCO_2をNからHへと変動した場合,ASA投与前には、PaO_2は有意に低下した(-34±9mmHg)が,ASA投与(10mg/kg)後には、PaO_2の低下は有意に抑制された(-27±8mmHg)。ASAはHPVを強めることから、ASA投与後にHに伴うPaO_2低下が抑制されたのは、HによるHPVの抑制に対し、ASAが拮抗的に作用し、HによるV^^′A/Q^^′ mismatchingの増強を軽減させたためと考えられる。尚,動脈血中のPGI_2の代謝産物6ーketoーPGF_Ia,はASAの投与後に有意に減少した。この事はASAのHPV強化にPGI_2の産生低下が関与している事を示唆している。しかし,lipoxygenase pathwayの代謝の亢進によるロイコトリエン等の物質の産生の関与に関しては、今後の研究課題である。
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