研究概要 |
胞状奇胎、絨毛癌で代表される絨毛性腫瘍の発生病理を個体特異的なDNA多型性であるミニサテライトDNAプロ-ブ33.15を用いたDNA指紋解析によって分子レベルで検討を試みた。胞状奇胎はDNA指紋解析ではすべての多型性をしめすバンドは父親型のDNA多型性のバンドに一致しており、胞状奇胎は雄核発生であることを分子レベルで証明した。(placenta1989,10,pp309)。更にこのDNA指紋解析によって従来臨床的に鑑別が困難である胞状奇胎と胎盤の水腫様変性を明確に鑑別することが可能であることを見いだし、科学誌「Am Jobstet Gynecol」に発表した(1990 163,pp634)。また胞状奇胎の核以外の細胞質は卵細胞由来であるとされるが、我々は核外でDNAをもつミトコンドリアに着目し、このミトコンドリアDNAをpolymerase Chain reaction法で増幅し、RFLP解析することで胞状奇胎の核外成分は雌性発生であることを証明した(Gynecol Oncol 1991,40,pp29)。 絨毛癌の発生は先行胞状奇胎と疫学的に強い相関を示すが、その発生病理は未だ明確ではなく、我々はDNA指紋解析をこの発生病理に応用した。その結果、絨毛癌は先行妊娠の胞状奇胎より発生する雄核発生のものと、患者のdiploidの卵細胞より発生すると考えられる2種類のものが存在することを証明し得た。本研究の要旨は科学誌「Cancer Research」に発表した(1990,50,pp488)。 絨毛性腫瘍の増殖を促進する因子を解明する目的でマウスにおいて絨毛細胞の刺激因子とされるcolonyーstimulating factor 1(CSFー1)に着目し、ヒト胎盤でのmacrophage colonyーstimulating factor(MCSF)及びそのレセプタ-であるプロトオンコジ-ンcーfmsの発現をNorthern blot hybridization法で検討した。妊娠7週の胎盤においてすでにMCS、 cーfmsの発現が認められ、週数をおって発現量が増加することを認めた。またホルモンで刺激した子宮内膜および脱落膜においても両者の発現を認め、MCSFが絨毛細胞の増殖因子である可能性を報告した(Am J Reprod Immunol 1990,24,pp99)。
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