研究概要 |
本研究は受精現象の解明のために,電気生理学的に新しく開発されたpatch clamp法を導入して実験を行った。 1)動物卵の実験 golden HamsterにPMSとhCGの皮下投与を行い,過排卵を惹起させてから開腹し,卵を得て,実体顕微鏡下でpatch clamp用電極に陰圧をかけて卵の表面と電極を密着させた。この状態でCa*チャンネルの開閉状態を調べデ-タレコ-ダに記録した。次にハムスタ-の精子を培養液中に滴下し,位相差顕微鏡下で精子が卵にpenetrationする瞬関のCa*チャンネルの開閉状態について観察記録した。 56個のハムスタ-卵に対して,満足にデ-タの解析できた卵は25個であった。ハムスタ-の未受精卵ではCa*チャンネルの開閉の頻度は非常に少くない状態であったが,卵に精子がpenetrationする時には,Ca*チャンネルの開閉は著しく増加した。このデ-タは今までの他の実験よりほぼ推定されていたが,より直接的に証明したと言える 2)ヒト卵の実験 ヒト妊卵を使用した実験は,日本産科婦人科会学の見解により現在は行なってはならない事になっている。このため動物卵と同じ実験は行えなかった。このため子宮筋腫などの手術により得られた卵について,卵胎期と黄体期に分け,ヒアロニダ-ゼとトリプシン処理したgona free卵を作成し,patch clamp法によりCa*チャンネルの開閉状態を調べた。卵胞期7個と黄体期5個のヒト卵についてデ-タを得た。卵胞期のヒト卵のCa*チャンネルの開閉は非常に少くなかったが,黄体期になるとCa*チャンネルの開閉は増加傾向を示した。この事は黄体期になると受精準備状態となるものと推定された。
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