研究概要 |
アパタイトコーティングインプラントの上部構造物に付与した緩圧機構がインプラント・骨界面構造に及ぼす影響を明らかにする目的で,緩圧材料の疲労実験及びこれらを装着した動物実験を行い,以下の知見を得た。 1.緩圧材料としてバイオトロンR-M8,M12,M17及びM25の4種類を選択し,12ヵ月間にわたる人工唾液浸漬試験及び繰り返し荷重疲労試験を行った結果,弾性率の低いバイオトロンRほど物性の劣化が大きくなる傾向が認められた。R-M25では観察期間中その固有の弾性がよく維持されていた。 2.ニホンザル4頭にアパタイトコーティングインプラント16本を植立し,これらを緩圧材料としてバイオトロンR-M25を内蔵した緩圧上部構造物を装着するインプラント群(緩圧群)と金属のみで作られた非緩圧上部構造物を装着するインプラント群(非緩圧群)の2群に分け,上部構造物装着後12ヵ月にわたる臨床的観察を行った後,非脱灰研磨標本によりインプラント・骨界面構造を組織学的に検討した。臨床的には,緩圧群及び非緩圧群いずれのインプラントにも動揺は惹起されず,周囲歯肉の炎症も軽度であった。組織学的には,両群すべてのインプラント表面に周囲骨組織との直接接触が認められたが,非緩圧群に比べ緩圧群でより多量の骨組織が接触していた。組織形態計測では,緩圧群のインプラント周囲の骨量がよりく多く,特にインプラント底部で有意に骨量の増加していることが示された。 以上の結果から,上部構造物に緩圧機構を付与した場合のアパタイトコーティングインプラント・骨界面の組織構造が明らかとなり,同インプラントを臨床応用する際の緩圧機構の有効性に関して,基礎的知見を集積することができた。
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