研究概要 |
前年度までの結果では,再石灰化溶液中フッ素濃度を一律3.0ppmに設定したため,再石灰化溶液中フッ素濃度が根面の再石灰化に与える影響が不明であった。そこで本年度は,セメント質付着試料を用いて,フッ素濃度を0.04ppm未満(フッ素未添加),および0.5,1.0,2.0,3.0ppmに調整した再石灰化溶液を用いて,フッ化物未処理で前年度と同様の実験を実施した。ミネラル量とフッ素濃度の増加については,以下の結果を得た。 (1)再石灰化後における根面初期脱灰部のミネラル増加率は,脱灰直後を基準として,0.04ppm未満:6.4%,0.5ppmF:7.6%,1.0ppmF:9.2%,2.0ppm:10.0%,3.0ppmF:13.9%を示し,溶液中フッ素濃度に強く依存していた(相関係数:0.98)。 (2)同じく,表層からおよそ15μmまでの歯質中フッ素濃度は,0.04ppm未満:1,700ppm,0.5ppmF:5,000ppm,1.0ppmF:6,600ppm,2.0ppmF:7,200ppm,3.0ppmF:7,400ppmで,やはり溶液中フッ素濃度に強く依存していた。0.5〜3.0ppmFを添加した群は0.04ppm未満の群に比較して統計学的有意に高いフッ素取り込みを示し,また,表層から約40μmの深部でも,2.0ppmFと3.0ppmFの群が,他よりも有意に高いフッ素濃度を示した。 前年度までの結果は,第40回日本口腔衛生学会総会(1991年9月,東京)で発表し,これに本年度の結果と文献的考察を加えて作成した論文は,口腔衛生学会雑誌(第42巻1号,p.66ー78,1992年1月発行)に掲載された。 また,本年度は,マイクロラジオグラフの画像解析によるミネラルの定量評価方法を開発し,この方法論および応用例をまとめた論文の公表を予定している。
|