研究概要 |
ラット肝リソソ-ム膜に存在する分子量107Kの糖タンパク質(LGP107)の細胞内動態を検討した。LGP107の特異的抗体とperoxidase(HRP)との複合体を作成した。肝細胞を固定した後に、細胞内におけるLGP107の局在を免疫電顕で検討すると、FabーHRP複合体はcoated pit, endosome,lysosomeに検出された。この複合体を細胞内に取り込ませて経時的に追跡すると、取り込み直後ではCoated pitとearly endosome のみが染色され,時間の経過と共にlate endosomeとlysosomeが染色された。これらの結果から、LGP107はplasma membraneとlysosome間をendosomeを介してrecycleしており、LGP107の主なる存在場所はlysosomeであることが明らかになった。 リソソ-ム膜糖タンパク質である酸性フォスファタ-ゼ(APase)が可溶性リソソ-ム加水分解酵素と異なり、Mー6ーPの受容体に依存しない異なった機構でリソソ-ムへ移行することを明らかにした。 そこでリソソ-ム膜糖タンパク質が選別輸送されるためのsorting sigーnalはタンパク質部分にあると考えて、APase,LGP107,LGP96およびLGP87のcDNAをクロ-ニングした。それぞれは423,407,411,478個のアミノ酸から構成されていた。LGP87のみは膜にアンカ-されていると考えられる部分がNおよびびC末端の二ケ所に有り、膜アンカ-部分の他の三者のそれとの相同性は観察されなかった。しかし、これら三者間の膜にアンカ-されていると考えられる疎水性の高い部分は何れもC末端側にあり、それぞれ27,24,24個のアミノ酸よりなり、これらの一次構造には75%以上の相同性が認められた。この事はLGP87は現在までクロ-ニングされたリソソ-ム膜糖タンパク質とは著しく性質を異にするリソソ-ム膜糖タンパク質で有ることが明らかになった。 エンドソ-ムとリソソ-ムの試験管内融合実験では、現在まで明らかにされているエンドソ-ム間の融合とは性質を異にする融合が起こることを明らかにした。
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