研究概要 |
コケイン症候群(CS)細胞は紫外線に高感受性で,紫外線照射後のRNA合成能の回復が低下していることが知られている。このことを指標として現在2群(A,B)の相補性群及びB群XPとの併発例が報告されている。今回の研究で以下の新知見を得ることができた。1. CS細胞(A,B群)にT4エンドヌクレア-ゼVを注入することにより紫外線照射後のRNA合成能及びタン白合成能の部分的回復が認められた。このことはCS細胞においては一部のDNA領域でのピリミジン2量体の除去修復に不備があることを示している。2. 実際リボソ-ムRNA遺伝子内においてピリミジン2量体の除去がほとんど見られないことをアルカリ変性ゲルを用いて示すことができた。3. A,B群CS細胞間及びCS細胞と正常細胞間での細胞融合の結果,前者では約16時間,後者では約8時間後からRNA合成能の回復が認められた。このことはCS欠損因子は単独では不安定であるが,両者が同時に存在すると安定化する可能性のあることを示唆している。4. RNA合成能の回復はATP,NADを核内に注入しても認められなかった。5. ポリADPリボ-ス合成酵素,DNAカイネ-スの核内注入も無効であった。6. 正常細胞抽出液を注入することによりA,B群XS細胞でのRNA合成の部分的回復が認められた。7. これらのCS欠損因子は核タン白で,細胞当りに含まれる量は必要最少限しかなく,紫外線による活性の誘導は認められなかった。またB群欠損因子はA群欠損因子に比べ不安定であった。8. これらの因子の大きさを知る目的でHeLa細胞由来の抽出液のゲル濾過及びmRNAの庶糖密度勾配遠心を試みたが,活性の検出には至らなかった。9. B群XP欠損因子はゲル濾過で分子量約60万を示し,この分画のみがUDS並びにRNA合成能の回復を促進することから,本群では単一遺伝子の関与が示唆された。
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