研究概要 |
遺伝情報転写に関与する酵素RNAポリメラ-ゼのもつ複雑高次の情報処理機能を支える構造基盤とそれら諸機能の制御機構を解明する目的で、組織的・系統的研究を展開した。機能ドメインの解析は,主として大腸菌RNAポリメラ-ゼを改究対象としたが,併せて他の細菌やウイルス,分裂酵母RNAポリメラ-ゼの研究も行ない,比較検討する方法も採用した。大腸菌RNAポリメラ-ゼの機能地図作成に関しては,本年度下記の成果が得られた。 1)αサブユニットの機能ドメインを解析する目的で,C端からの欠失変異コレクションを作製し,各単離サブユニットから試験管内で変異酵素を再構成し,それらの機能欠損を調査した。その結果,N端側にサブユニット集合の機能部位,C端側に各種転写促進因子との相互作用に必須の領域があることが示唆された。これら転写因子はいずれもプロモ-タ-より上流に結合したRNAポリメラ-ゼに作用することから,RNAポリメラ-ゼはββ^1を失頭にしてプロモ-タ-に結合することが予想される。 2)βサブユニットの機能部位地図は,点突然変異コレクションを用いた解析によって大略が判明した。この結果を検証し,さらに詳細な機能地図づくりを目標に,内部小欠失作製を試みた。新たな方法開発についとは, 助手・藤田信之が英国に出向き共同研究によって確立した。 3)αサブユニットの機能地図については,大腸菌でも多数の分子種の存在が知られているので,更に未知の分子種を探索し,全分子種の構造・機能を比較する方法を採択した。また,σ分子種間でハイブリッドを作製し,機能部位を同定する試みも開始した。これもまた,日英共同研究の一環として実施している。
|