研究概要 |
鳥取県下で発見された自家和合性を示すニホンナシ‘おさ二十世紀'を用い,自家和合性と黒斑病抵抗性を合せもつ新品種の育成と,ニホンナシに共通的に認められる自家不和合性を究明することを目的として,本研究を行った。成果の概要は次のとおりである。 1.‘おさ二十世紀'自殖および交雑第一代より,自家和合性で黒斑病抵抗性を有し,さらに果実品質のすぐれた系統を選抜したところ,20系統の優良系統が得られた。 2.‘おさ二十世紀'の自家和合性の性質を,花柱における自家不和合反応を阻害する遺伝子の作用に基くと仮定した場合,‘おさ二十世紀'を母本とした自殖および交雑の第一代の分析では,‘おさ二十世紀'の自家和合性関連遺伝子は優性に遺伝し,その遺伝子組成はCcとなる。しかし‘おさ二十世紀'を父本として‘幸水'‘新水'と交雑した場合には,これでは説明のできない分離比を示した。一方,‘おさ二十世紀'の自家和合性をS_2,S_4遺伝子のいずれかが突然変異(Stylar part mutation)をおこしたことによると仮定した場合にも,‘おさ二十世紀'を父本とし,‘幸水'‘新水'と交雑した場合におけるF_1の分離比を説明することはできなかった。いずれにせよ自家和合性を有するF_1を効率よく得るには,‘おさ二十世紀'を母本として交雑を行うのが望ましいことが認められた。 3.自家不和合性と花柱内のRNase活性との関連性をみるため,自家和合性を示す‘おさ二十世紀'およびそのF_12系統と,自家不和合性を示す‘二十世紀'および‘おさ二十世紀'のF_12系統について花柱内のRNase活性を比較した。しかし両者の間に何ら差異は認められなかった。
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