研究概要 |
現在本邦においては,高齢者数は確実に増加しており,歯頸部の歯肉退縮に由来する根面齲蝕や歯根露出に伴う知覚過敏は増加の一途をたどっている。これらの症状を除去し,併せて歯頸部や露出歯根面の齲蝕予防を意図して本研究は計画された。平成元年度より本年度までの研究により以下のことがらが明らかとなった。 即ち,根面塗布法及び材料として,10%のクエン酸水溶液に20%の割でCaCl_2を溶解させた歯面処理材で歯根表面を処理し,これにサリチル酸誘導体であるSA Solution(3%NMSA in Ethonol)を塗布し,次いで光・化学重合型ボンディング材を塗布・光硬化させ,次いで有機複合フィラ-を33重量%含有する光硬化型低粘性レジンライナ-を塗布・光硬化させる手順である。次いで1週後に通法に従って仕上げ・研磨を行なう。実にこれらを実際の臨床に応用出来るようにするため,塗布法及び塗布用小筆などを開発した。この材料に関しては成猿の歯牙を用いて歯髄刺激を検討したところ全く問題のないことが明らかとなった。また併せて行なわれた歯頸部齲蝕象牙質の超微細構造に関する研究により,その超微細構造や,齲蝕の進行が歯冠象牙質のそれと異っていることも発見され,今後の研究の基礎的情報とすることが出来た。以上を総合して行なわれた臨床試験により,確実に歯頸部並びに露出根面の知覚過敏を抑えうることが確認された。 今後,この塗布材のポリマ-鎖の中に弗素を組み込んだものを開発し,更に齲蝕予防効果の高い根面塗布材を試作する予定である。
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