研究概要 |
タンパク質結晶化のための要素解析を,モデル分子である卵白リゾチ-ムを用いて系統的に調べることと,新規に結晶化を試みる3種類の有用タンパク質を用いる実験を併用することによって,貴重な知見を得ることが出来た。それを,以下のように要約することが出来る。 1.モデルタンパク質による結晶化機構の解析 a.結晶化速度のカイネティックス 光学顕微鏡観察で求めた結晶化速度の対数は,析出剤温度とは直線関係にあり,pH依存性はこの直線関係の勾配を変化させることが見出された.多形依存性(正方晶・斜方晶)は,温度によって結晶化速度の勾配が変化するように現れた. b.光散乱トモグラフによる格子欠陥観察 本研究により,初めて非破壊的方法によるタンパク質結晶中の格子欠陥の観察が行われた.欠陥分布は,結晶表面近傍において密度が高くなり,さらに成長境界をもつ結晶の存在も確認された. c.エッチングによる格子欠陥観察 表面溶解により,格子欠陥に対応するエッチピットの分布を観察した結果,光散乱トモグラフ法と同様に結晶表面近傍に欠陥が多く分布する傾向が確認された. d.不均一核形成 ガラス・高分子フィルム上に吸着させてリゾチ-ム結晶を選択的に結晶化させた. 2.有用タンパク質の結晶化 微生物産生毒素タンパク質,植物分泌タンパク質,海藻レクチンを,精製して10mgレベルの試料を求め,結晶化実験を繰り返し行ったが,アモルファス沈澱化が多く,結晶化には至っていない。
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