研究課題/領域番号 |
01510010
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
中国哲学
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研究機関 | 群馬県立女子大学 |
研究代表者 |
濱口 富士雄 群馬県立女子大学, 文学部, 助教授 (40141387)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1990年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1989年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 清代考拠学 / 銭大〓 / 経書解釈 / 訓詁 / 儒学 / 実事求是 / 好学深思 / 以意逆志 / 古音 / 銭代〓 / 潜研堂文集 |
研究概要 |
本研究は、清代考拠学における経書解釈の実証的な方法論とそれを基礎づける認識のあり方、そして儒学的形而上学との関係を明かにすることを目的とした。 まず、銭大〓の経書解釈の実態について考察した。かれは漢代の訓詁を尊重するが、その理由は、単に聖賢の時代に近い注釈というだけではなく、聖賢の遺言である「古訓」と重なる両義的な存在であるとの認識によることを明かにした。またその考拠は、古音の音韻論的分析にもとづく実証的・合理的な手段による解釈手続きによるが、声紐研究と双声を軸とする転音理論の根柢には儒学的形而上学による値価づけがあり、実事求是にとどまらず、儒学の形而上学的認識を背景としていたことを見た。 ついで、こうした銭大〓の経書解釈にたいする理念と深い関わりをもつ乾嘉期の考拠学の解釈理念について考察した。従来、考拠学の実証性を象徴するとされた「実事求是」が、実証主義的であるが故の限界を露呈することになり、文献に現われない資料をも包摂して解釈してゆく、いわゆる『史記』五帝本紀賛の「好学深思」は、実事求是を補完する重要な解釈理論として重要視されていた。 さらに『孟子』万章上における「以意逆志」は、解釈における全体と部分との間の循環問題を潜在させ、儒学的な関心や儒学の道にたいするあらかじめの理解を全体とし、経書の記述を部分とするかたちで、経書解釈に儒学的関心を取り込んでいた。しかし、これはいままでの研究ではほとんど注目されなかったのであり、いまその考拠学上の意義を確認しえたことは、考拠学の経書解釈にたいして一知見を付け加えることができたと考える。
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