研究課題/領域番号 |
01510023
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
宗教学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 廣治郎 東京大学, 文学部, 教授 (40012984)
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研究分担者 |
東長 靖 東京大学, 文学部, 助手 (70217462)
山内 昌之 東京大学, 教養学部, 助教授 (80158071)
板垣 雄三 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (10014458)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1989年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | イスラム / 権威 / イスラム法学 / イスラム神秘主義(ス-フィズム) |
研究概要 |
1.7月に行われた基調報告では、竹下政孝氏が準研究分担者として、イスラムの権威の象徴としてのカリフ制が、13世紀のモンゴルの侵入によって崩壊した後、神秘主義聖者によって代替されたと報告した。歴史学・社会科学研究の対象としてのカリフと宗教思想研究の対象としての聖者とに同質のイスラム的権威を認めたという点で、この報告はこれらふたつの研究の統合への試みをめざす本研究の出発点にふさわしいものであった。 2.その後、各自の研究を秋から順次発表し、共同討議をおこなった。まず宗教思想研究の側から、中村がイブン・ハルドゥ-ンの都市観をもとに王国の権力の交替について論じ、その後東長がマムル-ク朝において「法的権威であるウラマ-対精神的権威であるス-フィ-」という対立の図式はあやまりであると報告した。 3.他方、歴史学・社会学研究の側からは、板垣がリビアにおける現実の政治的権力と宗教的権威とのかかわりを論じ、その後山内がソ連内の少数民族の分離独立の動きのなかでの宗教的意味を報告した。 4.更に本年1月には市川裕氏が比較の対象として、法的権威が精神的権威を排除しつつ、結果的には取込んできたとするユダヤの権威観を報告した。大帝国を作らなかったユダヤ人社会では政治的権力が重要な意味をもたなかったのに対し、イスラムでは不可欠な要素であり、この事がイスラムの権威観に特徴的であると認識された。 5.研究のまとめ:以上の研究家から、政治的権力の担い手であるスルタンや現代の大統領、国王と、法的権威の代表である法官層、さらには精神的権威である神秘主義者の各々が、時に対立し、時に妥協しながら緊密なネットワ-クをつくっているイスラム世界の像が浮き彫りにされた。この際、法官層は、日本の場合とは異なり、宗教的権威でもあることに留意する必要がある。
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