研究課題/領域番号 |
01510031
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
前田 富士男 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (90118836)
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研究分担者 |
ヤマンラール水野 美奈子 慶応義塾大学, 言語文化研究所, 講師
紺野 敏文 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (10170440)
末吉 雄二 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30051709)
河合 正朝 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30051668)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1989年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | イコノクラスム / 聖像破壊 / 反造形 / イコノフォビア / ヌミノ-ゼ / ポスト・イコン |
研究概要 |
われわれが規定した芸術作品の「イコン性」、すなわち作品の「力」とは、ひろくはR.オット-におけるヌミノ-ゼ(畏怖すべき輝き、放射)や、またW.ベンヤミンにおけるアウラ(近づき難さ)と類縁的な概念である。しかし本研究の関心は、ヌミノ-ゼやアウラの図式的な枠組みを打破し、美術史上の諸事象に則して検討を重ねつつ「イコン性」概念の新たな視圏を獲得しようとする点に向けられた。この過程でまず、宗教的崇敬の点から近代以前と以後が区別され、中世の宗教芸術に顕著な造形作品の実在性と造像の精神性との対立の諸様相が問われた。たとえば我が国の仏教彫刻界は、経軌や伝統的造像のイメ-ジに基づいて飛鳥時代以来鎌倉時代まで発展的な造形活動を行ったが、その主たるモチベ-ションは、造像の多さにより功徳を得るという仏教的罪意識の償い及び信仰心を満たした「作品」の相対的完成度にあったといえよう。しかし、同じ鎌倉時代にはこれを否定する精神活動が浄土宗、浄土真宗、法華宗ほかの新仏教に顕然化した。ここに我が国における芸術的反造形の最も尖鋭な表現がみられることとなった。イコノクラスムの典型はイスラ-ムにみられる。イスラ-ムの芸術家たちの制作における「創造性」は、徹底したイコノクラスムによって最終的には否定されざるをえなかったが、しかし15世紀から18世紀にかけてイランやトルコで記された画論や建築論を注意深く考察すると、実は「創造性」をめぐって彼ら独自の芸術概念と造形作品が育まれていたことが指摘できる。ところで近代以後、とくに20世紀初頭からのアヴァン・ギャルド美術では伝統的な「イコン性」は否定されたわけだが、写真における「過去」の力やオブジェの聖遺物的モノの提示など「表出expression」の無媒介的力動性が主題化され、ポスト・イコンが制作活動の契機となったとの見解も示された。
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