国債比較を目的とした調査・研究は、近年増加する傾向にあるが、比較のための方法論的な検討は、ほとんど行われていないのが現状である。異なった文化や社会から得られたデ-タ-に現れた差異が、測定しようとした次元における、それらの国々や分化間の実質的な差異を反映しているのか、あるいは、回答者の属する社会や文化に特有の「反応の構え」によるものかを区別する必要がある。本研究は、近年、特に活発に行われている日米比較研究のなかから、生活や職務満足度を中心とした自己評価に関する質問への回答パタ-ンの違いに注目して、異分化研究国際比較研究の解釈の妥当性にかかわる問題点の検討を試みた。 日米企業の従業員を対象とした比較研究では、日本人の仕事に対する満足度は、アメリカ人に比べて一貫してかなり低いことが見い出されている。この知見は、日米間の職場をととりまく環境の実質的違いを反映していると解釈されることが多い。しかしながら、職務満足度に見られるような日米両国民間の評定の差は、中・高校生の自己評価、学校生活や学業成績に対する満足度、さらには、親の子供の学業成積に対する満足度などについてもかなり一貫してみとめられる現象であることも知られてきている。本研究は、日米比較のために行われた既存の調査、研究を検索した結果、満足度、自己評価に関する質問項目回答へ回答ペア-を130例収集し、メタ分析を用いて、その差異が統計的にどの程度安定したものであるのかを検討した。130例のうち、85%について有意な差がみられ、effectsizeの平均と誤差は、1.22と.45であり、調査のデザイン要因の影響はあまり見られなかった。このような差異の説明モデルとして、若林(1982)の提出している、1)客観条件仮説、2)期待水準仮設、3)表出行動仮設、4)流出効果仮説の比較検討を行い、今後の実証研究の可能性を探索した。
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