目的:生後1年目の後半では、「やりとり遊び」とよばれるプレイフルな相互交渉が母子間で観察される。 ところで、やりとり遊びの場面では、ボ-ルをぶつけたり、おもちゃを隠したりするなどの“playfulなteasing"が、母親から子への遊びの開始の手段、やりとりのテ-マとして用いられることが予備的な観察から認められている。このような母親からの働きかけの際には、母親から子へのプレイサインの発信が必須であり、次に子がそれを受信できなくてはならない。そうでないと、このような母親の働きかけは、「いじめ」そのものになってしまうであろう。そこで、ここでは、このようなやりとりが成立する際の構造を探索的に調べてみることにする。また、そのような母子間のプレイサインの伝達には、母親の情動表出の明瞭さ、子の母親のサインへの敏感さなどの個人差が予想されるので、それが、どの様な型に分類されるのかを探究する。 方法:(1)対象児〜生後10か月前後(月齢誤差±1.5か月以内)の乳児とその母親20 (2)手続き〜北海道大学乳幼児臨床発達センタ-内の実験観察室施設に、個々の母子に来てもらい、(1)agressiveな行為を誘発するようなおもちゃでの10分間の母子自由遊び。(2)block stacking;母親に多角形のブロックを高く積むことへの挑戦。(3)reactions to fearful toys;母親に乳児が恐がりそうなおもちゃ5こを順にを渡して、次々に提示などの課題をしてもらった。観察の方法は、2台のVTRを用いて、そのそれぞれが母と子のそれぞれの動き・表情を捉え、その後、両者の映像を合成することによった。 結果と知見:以上の観察から得た資料は現在分析中であり、まだ明確な結果、知見を見いだしてはいない。実験中の印象から主な結果を予測すると、全体的にplayfulなteasingの出現頻度は高くはないが、大部分の母子で観察されたこと、個人差があること、母親からのplayfulなteasingが子に即時にplayfulな行為として伝わらず、子が母の表情を探り、母がそれに答えるという数回反復される時系列的なやりとりが認められたことなどである。
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