研究概要 |
研究を進めるにあたり,三人の研究分担者以外に五人の研究協力者を依頼し,東南アジアのタイ,マレ-シア,シンガポ-ル,インジネシア,フィリピン,ミャンマ-,スリランカ,インドの八ケ国を取り上げて比較研究を行った。研究分野は主に三分野で構成した。第1は,東南アジア諸国における社会的,文化的背景と言語教育の関係,第2は,各国における教育政策と教授用語の関係,第3は各国における教授用語と国民統合の関係である。 第1年度には,東南アジア諸国の言語教育の背景を調べることを目的に,各国の言語や宗教のような多様な文化と国民教育の関係を究明した。その結果,国民教育の普及確立にあたり,多民族国家であるマレ-シア,シンガポ-ル,フィリピン,スリランカ,インドでは,言語教育・教授用語および道徳教育において困難に相遇していることが明らかとなった。特に,シンガポ-ルとフィリピンは二言語教育,インドは三言語教育を行っていた。その原因には,主に多民族社会と同時に植民地教育の影響がみられた。 平成2年度には,各国における教授用語と国民統合の関係に焦点をおいて研究した。同化主義政策が強い,タイ,インドネシア,ミャンマ-では,国語による教育を推進していた。統合主義を取るマレ-シア,シンガポ-ル,フィリピン,スリランカでは複数言語を教授用語にしていた。文化的多元主義を取るインドでは,教授用語に地方語,地域語の使用を認めていた。このような関係が作られるにあたり,各国のいかなる歴史,社会状況,および教育政策が影響したかを探究した。研究成果は,最終報告書「東南アジア諸国における多言社会と教授用語」にまとめた。
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