研究概要 |
本年度は、当該研究の成果として三篇の論考を年度末までに刊行する予定である。(昨年度分については昨年度分を参照されたい。) (1)一は「五胡十六国・北朝期における周礼の受容をめぐって」と題するものである。周礼は中国古代の官僚制について記した著名な経典であるが、該経典をいかなる過程をへて、非漢族である五胡が受容していったかを追求したものである。その受容がその初期には周の文王に対する好感、天王号の採用といった段階であったものから、中期、後期へと徐々に変化し、その過程で,とりわけ孝文帝,北魏のもつ意味の大きいことを指摘した。 (2)二は「山越再論」と題するもので,三国時代呉の南方非漢民族である山越について、再論したもの。この山越に関し研究者はかって史学雑誌に蛮漢融合の観点から論じたことがあるが(95篇8号)、近年の研究の中に、山越の非漢族性を強調し、孫呉山越の未開性を強くおしだす研究が見受けられることに注目し、蛮漢融合の立場から,そうした見方を新史料を提示することによって妥当性に欠けるとした。 (3)三は「古代東アジアから見た有明海とその周辺地域」と題するものである。該論考は昨年脱稿した該研究に属する「四・五世紀における中国と朝鮮・日本」の続篇をなすものである。研究の主眼は,古代日中間の通交ル-トがいかなるのであったのか、という問題と、その問題と密接にからむ有明海との関連をさぐったものである。結果,古代中国人は、かなりの確度で,有明海の存在を知っていたといえる,ということを確認できた。この点は日本の中国化を考える上で重要な意味をもっているといえる。
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