研究概要 |
本研究の目的は,寡占市場のワ-キングとパフォ-マンスを情報経済学の立場から分析することであった。特に、寡占企業間の水平的情報交換の厚生効果、ならびに垂直的統合の影響が本研究の中心課題であった。1930年代には不完全競争の経済学が発展し,1970年代には不確実性と情報の経済学が登場し、そして1980年代にはゲ-ムの理論の新展開が見られた。本研究は,これら3つの経済学の流れの総合化を目指すものであった。 平成3年度においては、平成2年度の暫定的研究結果を著書・論文の形にまとめることに意を用いた。酒井泰弘は『寡占と情報の理論』(東洋経済新報社)を刊行した。同著の狙いは、不完全情の視点から、不完全競争を再検討したもので、この分野における本邦最初の本格的著作である。それは8章,299ペ-ジから成り、ク-ルノ-型の市場,ベルトラン型の市場およびシュタッケルベルク型の市場において、情報伝達・情報交換の社会厚生効果を休系的に分析するものであった。阿比留正弘は『応用ミクロ経済学』(共著,有斐閣)を出版した。同著は、情報経済学とゲ-ム理論の1応用分野として近年とみに発展しつつある産業組織論を体系的に概説したものである。同著において,阿比留は第6章を担当し,企業の垂直的統合の社会厚生効果を論じた。 酒井泰弘と阿比留正弘の2人は学会活動を盛んに行い、理論計量経済学会全国大会、同西部部会、日本リスク研究学会、年次総会、生活経済学会全国大会、同関東学会、箱根コンファレンス、伊豆コンファレンスなどに出席し、寡占と情報の経済分析に関する論文報告を行った。また筑波大学と福岡大学においてセミナ-を随時開き、各自の研究を発展させることができた。
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