本研究が、従来の動学ゲ-ム論的接近と比較し、より現実的な分析方法であることを確認し、既存の経済学における分析方法に、最適制御、分権制御、および階層制御理論などの工学的概念の着想を付け加え、経済分析の方法の拡張・発展に貢献できるものであることがわかった。現在まで、この分野に関しては、概念的、あるいは数理的にしか展開されていなかったものが、実際の統計デ-タを使用し、より現実的な量的経済政策の設計、および測定に寄与できる可能性があるが、内外ともに、未だ、萌芽的な学術研究段階に達したにすぎない。理論的な側面で言えば、階層的な政策構造の場合、下位レベルのサブシステム間の相互作用をどうとらえるかによって、上位レベルとの関係が変化してくることなど今後検討の余地が大きい。また、実証面で具体的にいえば、本研究が扱っているEC経済おいて、各国によって経済構造がかなり異なり、同じモデル変数を使った場合でも若干の国の構造パラメ-タは、統計的有意性を示さなかった。また、昨今問題となっている為替レ-ト等の国際金融変数をモデルにおいて考慮していなかったので、今後、ECを中心とした通貨同盟の動きに関連させて、日・米・欧の経済地域間の貿易などにおける経済利益の共有、あるいは対立を詳しく含めた経済政策構造理論の構築、さらに大規模化された計量モデルの推定方法の開発、および効率的運用による実証分析を進めなければならないことを痛感した。計算面においては、実証研究の基盤となるソフトウェアのプログラマ-との共同作業によるコンピュ-タ・プログラミングの作成・整備が急務であることを実感した。地球温暖化現象、土地価格高騰、住宅問題などに見られるように、経済と経済を取り巻く自然・社会・生活環境をも含めた計量モデルによる社会経済環境政策構造の理論的構築と実証分析を課題として検討したい。
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