研究概要 |
1)本年度は,本研究の最終年度にあたるため,ソ連・東欧諸国の個別研究を行いつつも,研究のとりまとめを意識して,総合的検討を実施した。とくに,市場経済化の本格的取り組みを開始して1年前後経済した東欧の経験,ソ連崩壊という世界史的大事件,およびそこでの市場経済化の困難を分析の対象とした。 2)東欧に関しては,IMFの指導下で実施されている,経済リベラリズムにもとづく急進主義的市場化政策が,各国産業に大打撃を与えている実態を分析し,ブレトンウッズ体制に旧ソ連・東欧をいかに組み入れるべきか再考を要すること,いわゆる「ショック・セラピ-」に代る政策が緊要であることを主張すると同時に,その模索を行った。 3)ソ連については,市場経済化プログラムの詳細な分析にもとづいて,既に90年秋以降から市場経済化政策は出口のない袋小路に陥っていることを,91年7月発表論文で指摘し,その打破の試みであった8月ク-デタ-事件の考察にもとづいて,その本質が共和国独立とソ連解体にあることを逸速く主張することができた。またCIS(独立国家共同体)メンバ-にも,その具体的条件を無視して,自由主義的急進主義を機械的に適用することの危険性を強調した。 4)ソ連・東欧の経験が示す市場経済化の諸問題を検討して,これを分析する一般的装置として,「市場経済化の初期条件」を提案したが,こまは研究者や官庁の間で反響を読んだ。 5)以上の研究実施過程において,資料の収集・整理・作成,内外の研究者・ビジネスマンなどからの聞き取り調査を行う上で,研究費補助金がきわめて有効であったので,ここで感謝の意を表したい。
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