0.本研究は、従来、モノの側面にのみ偏重されてきた生活水準の測定尺度に、新しい視点ーケイパビリティーを導入し、測定の枠組みを構築し、実際に測定尺度を確立しようとしたものであった。 1.まず、概念の創始者アマ-ツィア・センの著作に立ち返り、ケイパビリティ概念の明確化を行い、新しい視点による生活水準測定のための理論モデルを作り上げた。 2.実証研究:(1)測定尺度の抽出:理論モデルから導出される尺度を可能な限り列挙し、検討ののち、尺度抽出のための質問表を作成した。 (2)実態調査の実施:浜松市を調査対象地域に選び、質問表を発送、回答は、年齢・性別に集計され、浜松市で、望ましいと考えられている測定尺度を抽出した。 3.上で抽出された測定尺度のそれぞれについて、その実現のために必要とされる財・サ-ビスを特定化した。その場合、地域、時点、対象となる個人の3つの角度に注意が払われた。 4.本研究の成果・応用 (1)本研究の進行過程で、「必要生活費」の算出方法に上の結果を応用することに気がつき、生涯生活設計における世代別必要生計費に本研究の新しい成果を応用した。 (2)さらに、現代の生活保護を必要生計費の観点から眺め、生活水準測定を社会保障との関連で論じた。 5.今後の研究の指針:財・サ-ビス概念はさらに検討を加えると、とくに「情報」を財・サ-ビスのひとつ(サ-ビス)としてとらえ、ケイパビリティの視点で分析を加えることが必要であると考えている。
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